57年前の東京五輪の開会式と同じく、きのうは晴天だった。国立競技場の前には長い列ができていた。お目当ては、五つの輪をかたどったモニュメントでの記念撮影。しかし彼らと競技場とは、高いフェンスで隔てられていた▼
人々と選手が分断された五輪を象徴するかのようなフェンスは、人の背丈の倍以上もある。開催地は確かに日本なのだが、直接触れることのできない五輪。地域住民と選手の交流も多くが取りやめになった▼
いくつもの無理な前提がつくられ、崩れてきた。1年でコロナに打ち勝つはず。ワクチンの効果で観客を入れられるはず。バブル方式で分離ができるとの前提も怪しくなっている▼
感染が収まらないなか、中止や再延期を求める声は多かったが、政府もIOCも顧みなかった。「アルマゲドン(最終戦争)に見舞われない限り、計画通り開かれる」とのIOC委員の言葉は、テレビ放映権料の軛(くびき)ゆえか。五輪の理念である「連帯」の言葉がむなしく響く▼
平和を求め、差別を許さない。五輪をそんな社会運動のようにとらえるのが間違いなのかもしれない。あらわになったのが、巨大スポーツ興行としての顔である。東京五輪の最大の遺産になるのは、五輪へのまなざしの変化だろうか▼
興行であっても、もちろんそこには興奮があり、感動がある。生身の人間が極限に挑む姿があるからだ。それでも同時に考え続けたい。東京という場を借りただけのようなこのイベントは、果たして必要だったのかと。
人々と選手が分断された五輪を象徴するかのようなフェンスは、人の背丈の倍以上もある。開催地は確かに日本なのだが、直接触れることのできない五輪。地域住民と選手の交流も多くが取りやめになった▼
いくつもの無理な前提がつくられ、崩れてきた。1年でコロナに打ち勝つはず。ワクチンの効果で観客を入れられるはず。バブル方式で分離ができるとの前提も怪しくなっている▼
感染が収まらないなか、中止や再延期を求める声は多かったが、政府もIOCも顧みなかった。「アルマゲドン(最終戦争)に見舞われない限り、計画通り開かれる」とのIOC委員の言葉は、テレビ放映権料の軛(くびき)ゆえか。五輪の理念である「連帯」の言葉がむなしく響く▼
平和を求め、差別を許さない。五輪をそんな社会運動のようにとらえるのが間違いなのかもしれない。あらわになったのが、巨大スポーツ興行としての顔である。東京五輪の最大の遺産になるのは、五輪へのまなざしの変化だろうか▼
興行であっても、もちろんそこには興奮があり、感動がある。生身の人間が極限に挑む姿があるからだ。それでも同時に考え続けたい。東京という場を借りただけのようなこのイベントは、果たして必要だったのかと。