浜路へ
よう元気にしてるみてえだな
お前から手紙を貰うなんて
驚いてひっくりけえっちまったぜ
さすがは鉄砲娘
いつも俺の心の臓を狙ってきやがる
お前の気持ちが真っ直ぐに飛んできた
俺はな浜路
お前の事一時たりとも忘れた事なんてねぇんだぜ
寒くてな
悲しくてな
帰る所がなくて神社の隅っこで
丸くなって眠る夜なんかは
月にお前を思い出すんだ
お前のまん丸な顔をさ
ま、そう怒んな浜路
あれから俺は人間の生珠を喰ってねえ
心がスカスカしてひどく喉が渇いちまう夜も
いつかお前に会える
いつかお前さんの生珠を喰えるんだって思うと
腹いっぺえになった心持ちで
舌をなめずりだけで眠れるんだよ
笑っちまうだろ?
犬っコロのこの俺がお前を想ってるなんざ
いま俺は「伏の森」に向かっている
読本にも書いてあった俺達、伏の生まれた場所だ
凍鶴や親兵衛、先に逝っちまった仲間の為にも
一度はその森ん中を走ってみてえと思ってな
きっと懐かしくて温かくて、どこかおっかさんの腕の中みたいな、そんな場所なんだろうと思っている
まぁあれだまがいもんなりに
てめえの生き方ってやつを考えてみたくなったんさ
桜が舞ってまたいい季節になってきやがったな
大川の花火大会
そうか浜路は初めて拝むのか
人が大勢出て堤灯船の明かりが川に滲んで
りんご飴やビードロ売りの声
毎年みんな大賑わいで俺はいつも遠くから眺めてたよ
見つかっちまうとお首を晒されちまうからな
ワンワンなんてでっけえ花火の音を遠吠えで蹴散らして
浜路と一緒に花火見物なんざそりゃさぞかし楽しかろうな
なあ浜路
「伏」って字どう書くか教わったか?
人の横に犬って書くんだぜ
だから浜路や
お前の横にもいつか俺をおいてくれ
(つづく)
よう元気にしてるみてえだな
お前から手紙を貰うなんて
驚いてひっくりけえっちまったぜ
さすがは鉄砲娘
いつも俺の心の臓を狙ってきやがる
お前の気持ちが真っ直ぐに飛んできた
俺はな浜路
お前の事一時たりとも忘れた事なんてねぇんだぜ
寒くてな
悲しくてな
帰る所がなくて神社の隅っこで
丸くなって眠る夜なんかは
月にお前を思い出すんだ
お前のまん丸な顔をさ
ま、そう怒んな浜路
あれから俺は人間の生珠を喰ってねえ
心がスカスカしてひどく喉が渇いちまう夜も
いつかお前に会える
いつかお前さんの生珠を喰えるんだって思うと
腹いっぺえになった心持ちで
舌をなめずりだけで眠れるんだよ
笑っちまうだろ?
犬っコロのこの俺がお前を想ってるなんざ
いま俺は「伏の森」に向かっている
読本にも書いてあった俺達、伏の生まれた場所だ
凍鶴や親兵衛、先に逝っちまった仲間の為にも
一度はその森ん中を走ってみてえと思ってな
きっと懐かしくて温かくて、どこかおっかさんの腕の中みたいな、そんな場所なんだろうと思っている
まぁあれだまがいもんなりに
てめえの生き方ってやつを考えてみたくなったんさ
桜が舞ってまたいい季節になってきやがったな
大川の花火大会
そうか浜路は初めて拝むのか
人が大勢出て堤灯船の明かりが川に滲んで
りんご飴やビードロ売りの声
毎年みんな大賑わいで俺はいつも遠くから眺めてたよ
見つかっちまうとお首を晒されちまうからな
ワンワンなんてでっけえ花火の音を遠吠えで蹴散らして
浜路と一緒に花火見物なんざそりゃさぞかし楽しかろうな
なあ浜路
「伏」って字どう書くか教わったか?
人の横に犬って書くんだぜ
だから浜路や
お前の横にもいつか俺をおいてくれ
(つづく)