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须田刚一 杀手7新连载小说

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須田剛一による新連載! 【須田寓話】Killer is Dead ~殺し屋は死んだ~ #1(1/2)
#1:kills 7th
俺は七日後に死ぬ──。
 今、ご丁寧に配達証明付きの封書が届いた。年内中には自殺しそうな郵便局員(エモノ)は、一言も言葉を発することなく封書を届けて淡々とこなす業務(ルーチンワーク)に満足気だったらしい。ちょっと許せねぇな……。失礼な公務員を見るとついついホームランを殺ちたくなった。得意のミッキー・マントルのフォームで、芯が頭を直撃(ジャストミート)する感覚が腕に伝わる。殺った瞬間、イッたと分かる、改心の一撃(クリティカルマーダー)だった。
 郵便局員(エモノ)はフラフラと与太って、俺を視界で捉えようと必死になっているが、今度は流し殺ちで顔面に直撃(ジャストミート)。してやったりだ。ビクつく眼球は、何かを訴えかけていたんだろうが、ここで死ぬか自殺するかのどちらでしかない生涯であれば、奴の訴えが何らかの意味すら持つはずがない。KOされたボクサーのように、くの字型の体は顔が支点となって地面に平伏して、じっと俺の靴を睨んでいた。悪くない睨みだ。感情が伝わってくる。この男に、未練を感じるだけの証しがあったのか。それだけが今回(パターン)の収穫(サンプル)だ。
 しかし弱った……。また1体、肉袋(サンドバック)が増えやがった。
 郵便局員(エモノ)が届けた封書の手触りは、北側の女(スケ)の肌のように産毛(シルク)立っている。これだけの封書ってことは、いい知らせに決まってる。デカイ仕事(ヤマ)か? 幹部への誘いか? 違うッ、あのホテルで眼が合った上品な女(スケ)からの恋文(ラブレター)だ、絶対に。いい女(スケ)はやることが違う、古風じゃねぇか……。
 都合のいい妄想なんてのは、100%(ヒャクパー)ハズレるもんだ。
 ついてねぇ、運(ヴィーナス)は俺を見離した。几帳面な仕事人(ワーカホリック)は、死の宣言(ポエトリー)を謳っていた。大胆且つ規則的な筆跡と、緻密で神経質な文面は、思考回路が壊(イカ)れた男の証明だ。やッちまった……、遂に地雷を踏んじまった。
 人生の中で巡り会ってはならない人間は、この3人だけだ。
 一、相槌(ヘッドバンキング)をうたない
 二、瞬き(ウインク)をしない
 三、無駄に笑う(バカスマイル)
 ようは、中毒者(ジャンキー)だ。3人の中毒者(ジャンキー)には死神が憑いていて、連中は地獄の住人といい人間関係を築いている。いや違う、いい死神関係? どっちでもいいだろ……。だからあれだ、オレは二、のタイプの中毒者(ジャンキー)に好かれちまった。署名は、カーティス・ブラックバーン……。凹むぜ。
 ~死ぬにはいい季節だ。
 七日後、殺りに伺う。
 正装で迎えれば、礼節には応えよう。
 ボランジェは、味方だ。苦しみは、別離だ。
 ヴィンテージを求める。
               Curtis Blackburn~
 ここシアトルじゃ、この世界(アンダーグラウンド)で知らない者はいない超大物だ。100%(ヒャクパー)の確率で、今の俺は転落中だ。俺の人生の閉店セールを、残りの七日でやらなくちゃなんねぇ。忙しくなるぜ。
 冷静に整理をするとだ……、簡単な話だ。オレが七日後、何処にいようともだ、仕事人(ワーカホリック)は必ず居場所を突き止め、確実に殺りに来るって自信が封書からは漲っている。
 俺は行間を読むのが得意なんだ。いやこの場合は不得意と考えるべきだろう。普通にバカだったら、テキーラ喰らって、回した地球儀に1発ブチ込んで、穴(ブラックホール)の開いた場所へ手荷物ひとつでファーストクラスに乗り込んで《勿論、飛行機に乗る前には、上品な邸宅での強盗は必須だ》、3回の乗り継ぎのあいだにはキャビンアテンダントとよろしくやっちまって、誰も知らない外国の秘境へ辿り着き、現地でマル特スパモ級の女(ビッチ)と運命の出会い、愛(♂)し愛(♀)され、時を忘れ3ヵ月の間ひたすらベッドで抱(ハートマーク)き合うって寸法(プロジェクト)さ。そして20年後──、新天地(ニューホライズン)での俺は闇社会(ダークサイド)の大物になって、順風満帆の余生を送っているに違いない。
 ちょっと待て! 人生にはifがある。もし地球儀に開いた穴(ブラックホール)が、秘境じゃなく先進国だったらどうするつもりだ。だが心配するな。穴(ブラックホール)は貫通するから、もうひとつ穴(ブラックホール)が開く。裏(ワーム)に行けばいいんだ。都会から地球の裏側に回れば、大概が秘境だ。この星はな、人間が思うほど、狭くはないんだよ。いこうぜ、遥かグリーンランドに。
 OK! 最高の計画じゃないか。独り言が永過ぎたおかげで、逃避行(エスケープ)の準備は整った。俺がバカでよかった。ありがとう母さん(マザー)、バカに産んでくれて!
ダン:いい話だな?
オレも一枚噛ませろや
悪いようにはしねぇ……
 俺の名前は、シゲキ・バーキンだ。どうやら、七日間の余白(リミット)は夢だったみたいだ。当然、男が部屋に入ってきた。100%(ヒャクパー)ヤバイ男だ。本能がそう云ってる。こんなおっかねぇ顔は生涯の間で一度も見たことがない。黒のスーツに、でっかいリボルバー。眼から殺意がビンビン伝わってくる。コイツ……、笑ってるけど、笑顔に見えねぇよ。
ダン:オレが連れてってやるよ
恐怖の楽園(グリーンランド)に
 銃声が響くと、世界(オレ)は暗黒に支配された。
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7月1日11:45am
シゲキ・バーキンのアパートメントにて。
クリストファー・ミルズは約束の時間に、5時間以上遅れてきた。
 何食わぬ顔で、開口一番言い訳を始めた。5時間金縛りにかかり動けずにいたらしい。シアトル一の最高な武勇伝になるだろう。表情に嘘が染み付いた硝煙臭い風貌でオーバーな仕草で物事を語ると、この男なぜかフェイクからファンタジーになるから不思議だ。誰も奴(クソ)を信用していないが、誰も奴(クソ)を憎んでいない。
 不思議なチンピラ(クソ)だ。これだけの遅刻は十分、殺(ト)る理由のベスト20に入る。優先度(プライオリティ)は極めて高すぎだ。いつ殺(ト)ってやってもいいが、まだその時じゃないだろうし、まだまだ利用できる奴だ。12歳のガキ(クソ)のくせに、コイツ(クソ)だけが潜れるルートも多く、コイツ(クソ)が消えちまうとシアトルの均衡が崩れる。そんだけのキーマンってのはムカつくが、認めるべき能力(レベル)は高い。ガキが、リンカーンを操る構図(アングル)は周りからの評価を上げるにはいい戦略で、コイツ(クソ)はそんな利さえも熟知してやがる。
 恐るべき子供とはコイツ(クソ)のことさ。
ミルズ:いいか、誰にも云わないでくれよ?
アンタだけにとっておきの情報を仕入れたんだよ
アントワープからの船だ
来週の週末 荷は無審査無認可のゴリゴリの合成薬
まだ誰も体験してねぇ薬品だ
アンタのところで仕切ってもらってもいいんだ
どうだ 噛まないか?
バーキン:調子くれてんじゃねぇぞ
先月の薬品で こっちは体が軋んでんだぞ
欧州(ヨーロッパ)のイカれた学者に蹂躙(レイプ)されんのは まっぴらだ
仕事通すんならよ 成分表くれぇ
少しは情報引っぱってこいや
ミルズ:そうかいそうかい…悪かったよ
いい話だと思ったんだよ
これでもさ アンタに気を遣ったつもりなんだぜ
アンタほどタフな薬師はいないって 本気で思ってんだ
 10月で30歳になる。肉体が極端に衰える年齢ではないのに、最近は体の節々(リンパ)に異変を感じることがある。大病の予感がしていたが、潜りの医者は必要以上に健康体だと云いやがった。翌日も激痛に耐えられなくなって病院にいったが、この医者はまた同じことを云いやがった。すかさず、殺った。顔に20本以上の注射を打ったら、見たこともない泡を口から噴いて苦しんでいた。まるで、蟹だ。
 どう考えても、最近流行りのやわらか頭で角度を変えて考えても、あの薬剤を投与してからだ、この変調は。健康体の体が感じるわけのない激痛が体中を走ることがある。まるで、肉体が別の何かに変わっていくような、耐え難い痛みだ。ドイツの薬品だと奴(クソ)は説明していたが、どこぞの大学の研究生が開発した不安定な代物ってことだけは最初に注意された。だが、異常に高いギャラに目が眩んだのは、事実だ……。
バーキン:情報だ 急いでくれ
訳あって 時間がねぇ
ミルズ:バーキン 今日は様子がおかしいぜ?
ひょっとして オレを嵌めるって話じゃねぇだろうな……
それでキョドってんのか?
バーキン:嵌めるんなら 森に連れてく
そん時ぁ しっかり湖に沈めてやるわ
そんなに暇に見えるか おい?
ミルズ:それならいいんだ 悪気がねぇってわかりゃよ
バーキン:いいか コイツの情報だ
カーティス・ブラックバーン
ミルズ:カーティスって……どういうこったい?
バーキン:奴に狙われた
予告の手紙が届いたってことだ
ミルズ:……死の宣告かい
厄介に好かれちまったな
手練のアンタでも カーティスは分が悪すぎる
バーキン:そんなこたぁ分かってるから オマエに情報を頼むんだ
何でもいい
ここから一週間の奴の動きを探れや!
ミルズ:……承知した
アンタ 悪い奴じゃねぇもんな
出来る限りの情報を出すよオレは
全力尽くすぜ 絶対にな
バーキン: 頼んだぞ……
死にたくなかったらな
ミルズ:カーティスは親友(マブダチ)だ
心配すんなよ アンタは生き延びるぜ
 奴は、慌ててリンカーンに飛び乗った(ニゲタ)。笑顔(スマイル)が引きつってやがる。奴(クソ)は死臭を嗅ぎ取るのが上手いらしい。そうじゃねぇと、この世界じゃすぐに死ぬ。どれだけ腕が強くても、射撃の達人でも、死の臭いを嗅げねぇ奴は、ヤバイ磁場に惹かれて、甘美な誘惑に負けちまう。トップレスの女(ビッチ)と死神は、オレの見立てでは同一人物だ、100%(ヒャクパー)。
ミルズ:ところでアンタ……
今日は誰か殺ったのか?
バーキン:ああ、もう2人殺った 安心したか?
ミルズ:安心したよ……
それなら 幸せ(ハッピー)だが アンタ やっぱり好かれてんぜ
悪魔によ……
バーキン:どういうことだ
ミルズ:オレは少なくとも アイツは関わりたくねぇんだ
悪ぃけど また連絡するよ
 チョコレートソースのようなタイヤ痕をたっぷりと地面に塗ったくって、リンカーンは右往左往して暴走していった。そろそろタイヤの交換の時期だろう。知り合いの修理屋を紹介してボッタクってやるか……。
 違うな……、何か違う。これは悪寒だ。心が凍りそうな悪寒だ。人間じゃない、獣に狙われている感覚だ。一応説明しておくが俺はまだ獣に襲われたことはねぇが、だいたい感覚は間違っちゃいねえだろうな。振り向くのが怖い。数時間前にも、同じ畏怖が俺を支配したな……。
 靴音がこっちに向かってる。あらら? 体が動かねぇぞ。体まで凍っちまったのか。全然、ヤバイ。このままじゃ、小便漏らす(ションベンチビル)……。足音は、俺の真後ろで止まった。奴の圧力が、小便(ションベン)を寸前で食い止めた。30超えてのお漏らしだけは、まぬがれた。この点だけ、奴に感謝する。しかしまあ、そんな場合じゃねぇ……。
ダン:また会ったなバーキン
自己紹介をしてやる
オレはダン・スミス
カーティスを殺れる唯一の男だ
貴様のその笑顔(スマイル)は 醜い
まるで地獄に住んでる顔だ
オレが天国(ヘヴン)に連れていってやるぜ
カーティスに殺られる前にな
 いずれにせよ、オレはこの時点で死んでいたのかもしれねぇ……。
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7月1日2:32pm
ダイナー「ノックスビル」の駐車場にて。
(つづく)


IP属地:广东1楼2016-01-16 17:02回复